今、耐震のリフォームをさせてもらっている家ですが昔ながらの
和風の立派な家です。
私はこの業界に入ってちょうど26年経とうとしています。
確か、この業界に来て数年で親戚の人からこんな和風の家の注文を
受けました。
私に気を使ってくれたのでしょう。
当時会社は、中堅クラスの下請仕事がメインでした。
このような難しい仕事は経験がありませんでした。
大工さんをはじめに職人さんに教えてもらいながらの仕事でした。
写真の2階の屋根の隅から斜めに突き出ている木を隅木と言いますが、
この材料一つもどんな材料を使えばいいのかわからなかったのです。
木の使い方というのは意外と難しくて「芯もち」「芯さり」と言って
芯もちはその木の芯が真ん中にある一本の木の年輪がそのまま見える木です。
一本の木の断面をご覧になったことがあると思いますがその真ん中を使った
木です。
芯さりとは真ん中を使わない木です。
木の取り方としては芯さりの方が高価になります。
少しでも予算を節約しようとして芯もちを頼んだところ銅の鈑金で木口をカバー
しないといけないということです。
芯があるだけに割れるんですね。
結局高くつきました。
写真は芯さりを使っています。
また瓦屋根の形自体にも違いがあります。
「てらす」「むくらせる」というのがあります。
「むくらせる」とは屋根の中央を高くして上にそらせることで、てらすはその反対で
軒先を高く反らせることです。
今は、本格的な和室や縁側は少なくなりました。
それに伴って真壁仕上げがなくなりつつあります。
真壁にすると柱が見えます。
和室では見える柱に節があると嫌われます。(出してはいけません)
柱にも 1面だけ節がないもの一ム、2面節がないもの二ム、3面節がないもの三ム、
4面節がないもの四ム というランクがあります。今はあまり使われませんが。
順番に高くなります。
節が見えないようにできるだけ予算を抑えて使い分けます。
この仕事は新鮮で楽しかったのを覚えています。
家づくりもだんだん変わってきました。
プレカット工場に頼めば材料を拾い出す手間もいりません。
プレカットでは化粧柱と言っても集成材になりますが。
自然素材の家づくりが堅調ですが、節のあるなしにこだわりはありません。
純和風の家づくりは大工さんの腕の見せ所です。
そして自然と大工さんもいい材料を使いたがります。
そのような仕事ができる大工さんも今は限られているのかもしれませんね。
それに伴って材料の拾い出しができる監督もいなくなりつつあるのでしょう。
機械やパソコンは便利ですが、失うものもあります。
携帯電話がないころ、電話番号は自然と覚えたものですが今は覚える必要が
ありません。
自分の番号さえ知らない人がいるくらいです。
あまり便利になると人が退化していきそうです。