先日、お引渡させてもらった家です。
こちらの家、リフォームの雑誌に掲載させてもらうことになり
一緒に取材を受けてきました。
リフォームの内容は、耐震、瓦の葺き替え、外壁のやり替え、一部増築、
畳から板間への変更でした。
古民家と言っていい築80年くらいの家です。
どうしてこれをリフォームしたかというと、ご先祖様が造ってくれた家だから、
現代の家にはない落ち着ける雰囲気があるから、ということです。
施主さん、この家の娘さんですがやはり耐震が心配だったそうです。
永く住み続けるにあたって「もし地震が来たら」とは誰もが考えます。
「来たら来たとき」と考える人もいますが、やれることはやっておく
ことで一安心できます。
一緒に屋根と外壁を直しておけば、雨水の侵入による腐朽も防げますから、
当分手をかける必要はないでしょう。
こちらの家は限界耐力計算という計算方法で耐震設計させていただきました。
構造計算をしている人にとって、耐震設計はそれぞれ意見があると思いますが、
現状の間取りをあまり崩さず、建て替えるような費用をかけることなく施工できる
というメリットがあります。
伝統構法特有の計算方法です。
この伝統構法、今は伝統工法と表記が変わっています。
工法は「物の組み立て方、施工方法」構法は「建物の構成方法」と記述されています。
伝統工法または伝統構法という言葉は最近よく聞くようになったと思います。
古民家ブームのせいでしょうか。
名前自体にいい響きがあります。
しかし、実際どのような建物が伝統構法なのでしょうか。
石場立て、足固め、貫、込み栓、漆喰の壁が一番最初にイメージとして浮かびます。
次に金物が使われていないといった特徴もあるかもしれません。
しかし、基礎のコンクリートがあれば伝統構法ではないのでしょうか。
布基礎に土台が載っていてもアンカーボルトで固定されていなければ在来工法では
ありません。
ということは伝統構法になるのでしょうか。
簡単な調査では判断できないのではないでしょうか。
私個人的には、石場立てと差鴨居が伝統構法の条件としています。
そして、2階建てではなく厨子2階(2階は低い物入れ)です。
さらになるべくなら、リフォームをしていない家。
この時代のリフォームにおいては、水回りを改修していることが多く
煙返しという大きな梁を切り飛ばしていることが多く、良かれと思ってか
頑丈な基礎のコンクリートが使われていることが多いからです。
このような家なら、構造材が極端に老朽化していないかぎり限界耐力で
計算できると思います。
どちらとも判断しかねる場合は、在来工法に変えてしまう方が耐震としては
確実です。